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せめて、今夜だけ…
第24章 綻び
男に取っての夢…。
出世街道…、誰もが憧れるフランス。
それを俺が?
俺の移動は部署中の誇り、部長の誇りでもある。
会社の信頼だって関わって来る。

あぁ、なんかもう頭の中がぐちゃぐちゃだ。
何から片付ければいい?
何から考えればいい?
魚月のこと?仕事のこと?
そもそも、俺のしたかったことって何だ?
魚月が欲しかったのか?
出世したかったのか?




あぁもう、本当に…、もう、何も考えたくない…。






その後、午後の仕事にも全然力が入らなかった。
やらなくてはいけない仕事を眈々とこなしただけで、周りの祝福の声なんて俺の耳には届いてなかった。
まるで何処吹く風で、何だか全てが他人事に聞こえた。

フランスに行く?
誰が?
あぁ、俺か…。
俺、日本を離れるのか…。
魚月と離れ離れになるのか。


仕事を終え会社を出ると、西日がいやに綺麗だった。
焼けるような西日の光。
いつもなら何も思わなかった西日が、やけに懐かしく感じる。


考えなくては…
思考が上手く回らないが、考えなくてはいけないことが多い。
酒でも飲もうか?
でも、今は飲みたい気分じゃない。


―とりあえず、今週中には返事を聞かせてくれ。その後ゆっくり話しを進めよう!ー

部長からそう言われたが、今週中に答えなんて出せるのか?
そもそも、こんな話しを断るはずがないと思われてるのか?

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