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せめて、今夜だけ…
第25章 水音
俺も好きだと叫びたかった。
本当はあのままさらってしまいたかった。
どこかに閉じ込めてしまいたかった。
だけど、そんな事出来るわけがない。
そんな事しても魚月を困らせるだけだから。
それに魚月は翔太のものだったから。

だけど、今はもう違う。
今は、もう――――――っ。






―――――「客…ん?お客さ………、お客さんっ!」

「んっ…?」

俺は誰かに肩を叩かれて起こされた。
眠い瞼をこじ開けると、俺を起こしたのは駅員だった。

「終点ですよ!」
「え?あ…っ」

やっべ…、いつの間にか熟睡してたな。
終点に到着して駅員に起こされるなんて、まるでどっかのアニメみたいだな。

「すいません…っ、すぐ降ります」

周りを見ると他の乗客はほぼ下車していて、車内に残ってるのは俺一人。
駅員に起こされるなんて貴重な体験をしたが、さすがに恥ずかしいな。

都会にいたときは、いつも吊り革に捕まって立ってたからこんなふうに熟睡することなんて出来なかった。
それに、人が多すぎて落ち着く場所なんかどこにもなかったし。

駅員に起こされ電車を降りて改札へと向かった。
改札に向かう途中、ホームには数人の人がいるだけで、都会のような慌ただしさはない。

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