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せめて、今夜だけ…
第25章 水音
都会のようにごみごみしてなくて、駅の中でも空気の美味さがわかった。
人通りの少ないホームを抜けて改札を出た。




「………っ」

改札を出てすぐに、涼しげな風が俺の頬を掠めた。
都会よりもずっとずっと涼しくて綺麗な風。
駅前は、タクシーのロータリーがあり、ビジネスホテルらしきものは数件並んでる、が
営業してるかどうかは怪しい雰囲気だ。

昔は賑やかだったと思う閉店した駄菓子屋。
煙草屋、そのそばには公衆電話。

昔はどこにでも当たり前にあったもの、都会ではすっかり見れなくなったものがたくさんあった。

一見不便そうに見えるが、コンビニも24時間営業のスーパーもあるようだ。

どこか懐かしさを感じるこの町のどこかに魚月はいる。
まずは魚月の実家である工場を探さなくてはならない。
今日は平日だし、時刻は11時前。
もし工場が潰れてなければ今頃は稼働時間中のはずだ。

俺はマップアプリを開き、昨夜保存しておいた魚月の実家の場所を検索した。



―有限会社 羽田工業―



マップアプリに情報が乗ってるのだから地元では有名な会社かも知れない。
場所がわからなくなっても最悪地元の人に聞けばわかるだろう。
そう思いながら、俺は荷物を持ちマップアプリのナビを見ながら足を進めた。


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