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せめて、今夜だけ…
第25章 水音
しばらく歩くと、段々と拓けた土地に出てきた、が
やっぱり田舎は田舎で、都会的なビルがあるかと思えば近くには田畑が拡がっている。
こういうのを昔ながらと言うのだろう。
都会にはない新鮮な風景を楽しみながら、俺は町を歩いた。
不思議と全然疲れは感じなかった。
肺に流れ込んで来る空気が新鮮で、美味しくて、呼吸をするたびに心が安らぐようだった。
綺麗な自然の風景。
俺もゆくゆくはこんな町に住みたいものだ。
フランスに行ってしまえばしばらくはこんな日本の風景は見られないだろう。
それにここは、魚月が生まれ育った町。
全てを目に焼き付けておきたい。
美しい町並みに目を奪われながらも、俺はスマホのマップを見ながら、細い路地を曲がり、かと思えば美しい河川敷を歩き、橋を渡り…。
どれぐらい歩いただろうか。
スマホのマップは、徐々に目的地に近づいて行く。
それと同時に、俺の胸の高鳴りも最高潮に達し、涼しい風を感じながらも身体中汗ばんでいた。
歩調も早くなり、逸る心が抑え切れなくなって行く。
スマホのマップの残りが100mを切った時。
気づくと辺りは森の一歩手前のような場所に辿り着いていた。
木々に囲まれた静かな場所。