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せめて、今夜だけ…
第25章 水音
周りには民家がチラホラあるぐらいで、コンビニやスーパーはおろか銀行すらないような場所。
一瞬道を間違えたかと思ったぐらいだ。

本当にこんなところに工場なんてあるのか?
マップを疑いながらもゴールを見落とさないように辺りを見渡しながら慎重に足を進めて行った。



……ここまで来て、もし魚月がいなかったらどうする?
迷惑がられたらどうする?
いや、それを承知でここまで来たんじゃねぇか。
今更ビビッてどうすんだよ。

焦り、逃げ出したい気持ちを抑えながら足を進めた。
マップではもうすぐ目的地に到着する予定だ。
そして、どんどんと静かな森の中へと進んで行く。
民家も少なくなって行き、舗装すらされていない砂利道が続く。
さっきまでの暑さが森の木々の木陰のお陰で幾分か緩和された。



そして

「…………っ!」








まさか、こんなところに工場なんかあるわけないと思いながら足を進めていた。
マップと照らし合わせながら森の中へ入って来た。
疑心暗鬼になっていた俺の目の前に現れたのは…







―有限会社 羽田工業―












森の木々に囲まれながら、まるで身を隠すかのように建てられたような工場。
外の外壁には錆びてしまった看板。
そこに書いてあった羽田工業の文字。


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