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せめて、今夜だけ…
第25章 水音
融資や援助を打ち切られたと思っていたから、魚月の不穏な現状を想像してしまったが、魚月はこうして生きていた。
それだけでも充分に満足だった。
でも、魚月にはまだ聞きたいことが山ほどある。

それに俺も、まだ魚月への気持ちは炎上している。
この気持ちにトドメを刺せるのは魚月だけだと気づいてる。


魚月に言われその場で待つこと10分。
今度は作業着のまま手ぶらになった魚月が工場から出てきた。



「お待たせしました」
「いや…」
「とりあえず、こっちに」



誰かに見られたら不味いのか、魚月は俺の手を取りどこかへ連れて行こうとしている。

「どこ行くんだ?」
「見られたら不味いでしょ?」









そして、魚月に連れて来られたのは、工場よりも更に山奥にある。
大きな河川敷だった。
都会と違って澄んだ水が流れる美しい河川敷。
その脇には大きな岩が転がったりしている。
地元の人間がBBQでもしそうな場所。

「子供の頃、よくここで遊んだんですよ」
「そうか…」
「夜には蛍も見れますよ」

周りには誰もいなくて、川も穏やかにさらさらと流れている。

転がる岩に腰をかけながら、魚月は懐かしむような目で川の流れを見つめている。

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