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せめて、今夜だけ…
第5章 恋心
「でも昨日はびっくりしました。魚塚さんの家もあの辺なんですか?」
「……まぁ」

こいつ、まるで女優だな。
昨日はあんな気だるそうな表情を見せてた癖に、今日はうって変わってニコニコと笑顔を見せている。
どうせこの笑顔も作り笑いなんだろう。
さすがプロだ。

「まさか、昨日の今日で来てくれるなんて思ってなかったから、嬉しいです」
「どの口が言ってんだよ…」

小さな声で、誰にも聞こえないように小さな声でそう呟いた。
周りには数人の客と、ママを含めたホステスが3人ほど。
魚月以外にこの声が聞こえてる奴はいないだろう。

魚月の化けように思わず呆れたような笑いが込み上げて来る。
魚月もそれに気づいてるのか、この雰囲気を楽しんでるのかクスクス笑っている。

「昨日は私だって気づかなかった癖にー」
「女はわかんねぇよ。メイクや服で化けるから」
「えー、私のメイクなんてまだ可愛い方ですよ?もっと凄い整形級の人だっているんですからー」

それでも俺の知ってる女にはそんな奴はいない。


しかし、そこまで考えて気づいた。


いや、身内以外の女性のスッピンを見たのなんて初めてだ。
少なくとも、社会人になってからは初めてだった。




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