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せめて、今夜だけ…
第26章 人魚と王子
俺は妙な自信があった。
俺が心をいっぱいにして会いたかった魚月はあんな女じゃない。
あんな冷たい言葉を吐き捨てる女じゃない。

疲れた体をベッドに投げ出し、天井をぼんやりと眺めていた。



あー、予約なしの素泊まりだし、後から飯を買いに行かねぇとな。
風呂は部屋に備えついてるし、とりあえず食事と飲み物の買い出しだな。

本当なら、こんな呑気な事を考えてる場合じゃない。
フランス行きの事、魚月の事、考えなくてはならないことが山のようにある。
だけど、今は…、魚月が生まれ育ったこの町を感じていたい。

魚月が生まれ育ったこの町で、魚月からの返事を聞かなくてはならない。

もし魚月が俺を拒絶したら、俺はこのまま帰ってフランスに行かなくてはならない。
フランス行きはうちの社の誇りでもあるんだ。



何か…、面倒だな…。




食事の買い出しに行かなくてはと思いながらも体が思うように動かない。
魚月を待ってる緊張感で空腹を感じない。
食欲もない。

せめて酒ぐらいは買いに行こうかとも思ったが、何かをしようという気力が起こらない。

疲れた体をベッドに投げ出し、ただただ時間が流れるのを待っていた。

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