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せめて、今夜だけ…
第26章 人魚と王子
「んっ、ん…っ!」


今日だけは…、魚月に会えた今日だけは我慢しようとしたのに。
最後になるかも知れないから優しくしようとしたのに、俺の頭の中の何かが切れた。
俺には関係ないと一喝された瞬間、頭の中でプツッという音が響いた。

俺の体の下でじたばたする魚月の腕を抑え、魚月の声が漏れぬよう魚月の苦しそうな呻き声をも飲み込んで行った。

「や、んっ、んぅ…」

時折、唇が離れた瞬間に漏れる魚月の吐息が可愛くて、そして妙に懐かしい。


もっと…、もっとと心が渇望する。
半年前に諦めた魚月への想いと欲望が再び炎上して行く。

「んっ、ん―――――っ!やめ…っ!やめて下さ…っ」

呼吸困難で意識が朦朧としてる魚月。
だけど、嫌がる魚月を見てるだけで背中がゾクリと騒ぎ出す。

あの時の魚月だ。
いつもそうやって、嫌だ嫌だと言いながら俺に抱かれて来た魚月の表情だ。
忘れるはずがない。

「だったら言えよ…」
「はぁ?」
「何で俺から逃げた?」



俺には関係ないと怒鳴った魚月の声は微かに震えていた。
魚月の精一杯の強がりだと、俺が気づかないとでも思ってるのか?

「だ、だから…」
「俺から逃げられるとでも思ってたのか?」

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