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せめて、今夜だけ…
第26章 人魚と王子
そう気づいた瞬間、妙な興奮を覚えた。
今、俺の体の下にいる魚月は、もう誰のものでもないのだ。
俺が好き勝手に跡を付けてもいいんだ。
しいて言うなら、魚月の両親に見られる恐れがあるぐらい。

この体の全部に、至るところに
好きなところに、俺の痕跡を残せる…。

「や…っ、そんな…っ」
「お前の肌は白いし綺麗だし、目立つところに付けてもいいかもな。俺のものだっていう印」
「何で私が…、魚塚さんのものなんですか…っ」

まぁ、確かに。
今の魚月は俺の彼女でも妻でもない。
俺のものなんて、烏滸がましいにも程がある。
でも、このまま魚月を置いて帰れない。
これ以上魚月を諦めたくない。
魚月を誰かに渡したくない。

「今から俺のものにするんだよ」

魚月のジーンズのボタンに手をかけボタンを外して行く。
ファスナーをずらそうとした瞬間、魚月がまたしても抵抗して来る。

「やめてっ!お願い…っ」

バカだな、魚月は。
力で俺に勝てるわけないだろ。
そんなの今までの事で魚月がよくわかってるんじゃないのか?
なのに、今更抵抗かよ…。

「やめて欲しかったらお前の本音を聞かせろよ!」
「――――――っ」

俺の怒鳴り声に驚いたのか魚月の体がビクンッと強張った。
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