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せめて、今夜だけ…
第28章 満月と魚
「ど、ど、ど、ど、どういうことですか、魚塚さんっ!!」
朝礼後、魚月の両親から簡単な仕事の説明を受け、事務所から現場に入ろうとしたところ
一瞬の隙を突いた魚月に捕まってしまった。
あぁ、やっぱりびっくりしたよな。
「おいおい、実家の工場で俺に迫るのか?」
現場に入ろうとした一瞬の隙。
まだ近くに魚月の両親がいるかも知れないのに、魚月は俺の腕を引っ張り人の目の死角になる場所へと連れ込んだ。
「な、な、な…っ」
あまりの驚きで声も出ないと言ったところか?
顔面蒼白の魚月を見て俺は必死で笑いを堪えた。
それはまるで、サプライズに成功した仕掛人の気分だ。
「な、何で…?だって魚塚さん…、フランスは?仕事は?」
パニックなってるのか言葉の組み立て方がめちゃくちゃになってる魚月。
無理もない。
つい先日、魚月を抱いたあの日に、魚月は俺を送り出す言葉をくれた。
本当なら俺はフランスに旅立てるはずだ。
それがまさか、魚月の実家に現れて
工場の作業着を着て今から魚月の工場の仕事をしようとしているのだから。
「どういう事…」
「辞めたんだ、Bijouxは」
「は…?」