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せめて、今夜だけ…
第5章 恋心
「誤解すんなよ。酔いを覚まそうと思ってここに来たらたまたま…」

別に最初から盗み聞きするつもりはなかったし、聞きたくて聞いたわけではない。
まぁ、結果的には盗み聞きした形にはなってしまったが。

すると、魚月は涙を見られたくないのか、片手で頬の涙を拭った。
最早、涙なのか雨なのかもよくわからないが。

「じゃぁ、もしかして、さっきの話…」
「仕方ねぇだろ。聞こえちまったんだから…」

魚月の事だから、どうせ"悪趣味"だの"エッチ"だのと俺の事を罵倒するのかと思いきや

「そうですか…」

と、力なく笑っただけだった。



―――――あー…、こいつってこんなに小さかったっけ?
店で見たときはもうちょっと大きいかと思ってたけど、間近で見たら意外に小ぃせぇんだな。

って、今は魚月をじっくり観察してる場合ではない。

雨は止む気配はないし、風だって冷たくなって来てるし。

「とりあえず、どっか屋根のあるベンチに移動するか…」




この辺は住宅街だし、気の聞いた屋内施設もなさそうだ。
傷ついてるであろう魚月を落ち着かせる方が先だな。










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