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せめて、今夜だけ…
第5章 恋心
「まぁ、でも…、彼はこの仕事が嫌いみたいで辞めて欲しがってますけどね。今日だっていきなり呼び出されちゃって…。言うこと聞かないと援助を打ち切るなんて脅されちゃって…、アハハ~、キツいですよね~」

それで他のホステスより先に帰ったのか。
つーか、それって完全な脅迫じゃねぇか。
魚月が逆らえないのをいいことに…。

「って、彼氏って立場からしたら彼女がホステスとか嫌ですよね?しかも彼は大企業の社長の息子さんだし、やっぱ世間体とかもありますもんね~」

必死に笑顔を作る魚月。


その必死の笑顔を見てるいると…







胸が痛い。
頭の中に霧がかかったみたいに何も考えられない。
酔いはとっくに覚めたはずなのに。







「そんな、笑うな…」







魚月の立場を利用してる男への苛立ちか…。
それとも、お人好し過ぎる魚月への呆れか。








「え…?」









両親の工場を守ろうと必死になって、店に来る客を癒して…
でも、じゃあ…

誰が魚月を癒すんだよ?











―――――――――っ!!


魚月の飲みかけのココアが地面に落ちた。
カランッと音を立てながら、ココアが地面に染み込んで行くが
今は何もかも、雨に流れて行く。












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