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せめて、今夜だけ…
第5章 恋心
「う、魚塚さ…っ!あの…っ」

気づくと、俺は魚月を思い切り抱き締めていた。
今にも折れそうなぐらい小さく、冷えきった魚月の身体。

「ちょ…っ」

驚いたのか、魚月は俺の腕の中でじたばたと暴れている。

「や、やだ…、まだ酔ってるんですか?」








こんな小生意気な女がどうなろうが知った事じゃないと思っていた。
魚月が誰と結婚しようが、俺には関係ないと思っていた。






「ねぇ、魚塚さ…」
「うるせぇ…っ」







魚月の身体は俺の腕の中にすっぽりと収まってしまうほど。
いや、俺の腕の方がまだ余ってる。
どんだけ小ぃせぇんだよ、この女は。

こんな小ぃせぇ身体に、そんなに荷物を背負い込むな。
今だけは…。



「あ、あの…」

「今夜だけ――――――っ!」









今夜だけでいい…。
俺は、自分で決めたルールを、自ら破ろうとしていた。
家庭のある女には手を出さないというルール。


魚月には婚約者がいて、もうすぐ結婚する。
魚月にとって俺みたいな存在は邪魔かも知れない。
俺に出来る事も何一つない。


だけど、今夜だけは…


「魚塚さん?」



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