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せめて、今夜だけ…
第6章 刹那
雨で濡れた衣類に冷えた身体。
温かな食事や飲み物もなく、シャワーで身体を温める事もなく
激しく打ち付ける雨に閉じ込められたよう。

いつしかシーツまでもがしっとりと濡れてきているが、そんな事すら気にならない。

防音になってるはずの部屋なのに、雨音と魚月の吐息だけが聞こえて来る。
雨音が全部、何もかもを掻き消してくれる。

ゆっくり、濡れた魚月の髪や頬を撫でながら、魚月のドレスを脱がして行く。
背中のファスナーをずらし、肩を滑らせて…。

「………あ」
「え…?」

いつもは何も思わずに脱がせて来たけど、今ふっと思った。
俺の手つきが止まった事に魚月は驚いているが…。

女の下着姿なんて幾度となく見てる。
裸だって見てるし、当に見慣れたはずなのに。

「ちょっと…、何ですか…?」

はだけたドレスから見える魚月の肌がキレイ過ぎて、思わず目を奪われてしまった。
女の裸や下着で緊張して手が止まるなんて、中学生じゃあるまい。

「いや…」

傷つけたくない、大事にしたい。
今夜だけは、甘やかしてやりたいと思ってはいるが

めちゃくちゃにしてやりたい、壊してやりたい、そんな正反対な衝動が産まれては消えていく。

優しくしてやりたいのに…
傷つけたくないのに…。



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