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せめて、今夜だけ…
第6章 刹那
――――――「なぁ、魚月って本名?源氏名?」
行為が終わった後、俺の隣でぐったりする魚月にそう話しかけた。
「くすくす…、そんなのも知らない女を抱いたの?」
当の魚月は、そんな初歩的な質問をする俺を笑っている。
先程、無理をさせてしまって申し訳ないと思っていたが、怒ってはいないようで少しホッとした。
「魚月だって、何も知らねぇ男に抱かれてんじゃん」
「それもそっか」
さっきまでの熱が引かない。
布団の中は裸なのに全然寒さを感じない。
それどころか、体の中から広がる幸福感で何もかもが暖かい。
「本名ですよ。名字は羽山。はやま なつき」
「羽山魚月?」
「年齢は?」
「女性にそれを聞きますか~?」
ベッドの中で魚月の事をいろいろ聞いてしまった。
それ以上に、魚月の全てを知りたかった。
変だな…、今までは、行為が済んだらさっさと帰ってた。
相手の女を気遣うなんて事はなかった。
何より、相手の女の素性なんかどうでもよかった。
名前すらちゃんと聞いて来なかった。
寧ろ興味すらなかったのに。
「いくつだよ。まさか、俺より年上とか?」
「そもそも魚塚さんの年齢、知らないですよ~」
こんな冗談を言いながらこんな時間を過ごすなんて…。
こんな、甘く、幸せな時間を―――――――。