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せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
―――――――終業後、俺はとあるホテルの一室にいた。
「魚塚さんと会うの、超久しぶりだよねー!私、すっごい寂しかったんだから~」
「そうだったか?」
相手は、先程俺にメッセージを送ってきた女だ。
所謂、…そういう関係の女。
確か、ずいぶん前にナンパして、それからの関係の女だ。
"久しぶりに会いたい"という連絡で、断る理由もないので会うことにしたのだ。
「そうだよ~!いっつも忙しいとか言っちゃってさ」
忙しいと言いつつ、色んな女と遊んだりしてたけどな。
1人の女に執着はしないし、この女もそれなりに割り切ってる。
ホテルに入ったのだって、目的は1つだから。
余計な手順は省きたい。
「先にシャワーにする?それともルームサービスでも取る~?」
俺はソファーに座りながらつまらなそうに煙草をふかした。
ホテルの案内書を読みながらあれこれ話しかけてくる女に目をやる。
肩までのボブカット、胸元を露出させた服、真っ赤な唇、きっつい香水。
今までは、女の風貌を気にしたことなんてなかったが
何だろう…、食指が動かない。
部屋に入ったはいいが、いつもみたいに燃えない。
それどころか、虚しさしか感じない。
「ねぇねぇ、魚塚さん~」
甘ったるい声で俺を誘う女。
魚月を忘れるために違う女を抱こうとしてるなんて、ただの愚行だ。
いや、この女を抱けば、魚月への気持ちを絶ち切れると思った。
「女なんてみんな同じだ」と思えると。