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せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
「あ…っ」

女の首筋にキスをすると、待ち望んでいたかのような甘い声が漏れる。
いつもの事だ。
こうやって愛撫をして、女が悦んで…、やることなんか1つだ。

「んぅ…」

女の声が艶を帯び出して行く。
俺の愛撫1つで女はどんどん乱れて行く。

しかし、それに比例するかのように、俺のイライラは募って行く。
例えようがない不快感と虚無感、喪失感。
以前のような興奮はない。

「――――――――っ!」






イライラする…。
女の声も、反応も、俺を求めるこの腕も…。

現実から逃れるように目を閉じた。
しかし、目を閉じると






魚月の顔が浮かんだ―――――――――。










「くっそ…っ」

ふざけんなよ…。
何なんだよ…っ!!







「う、魚塚さ…」

俺は女の体から離れた。



何をどうしたって、この女を抱く気にはなれなかった…。






「ちくしょ…」

小さな声でそう呟いた俺はベッドの脇に座り込み、俯き、頭を抱えた。

何で…、こんな時に魚月の顔が浮かぶんだ…。

昨夜の魚月の顔が脳裏から離れない。

「魚塚さん、どうしたの?」

髪も衣類も乱れた女が俺の背中にそう問いかける。
女の方も、いきなり突き放されたのだから驚いているのだろう。


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