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せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
―――――――カランッ。
店の扉に付けられた鈴が鳴り響く。
それと同時に、心臓が今にも爆発しそうなぐらいに大きく跳ね上がる。
ドクンッ,ドクンッ…。
すると、中から
「あら、魚塚さん!今日もいらしてくれたんですか?」
最初に俺を出迎えてくれたのは、ママだ。
魚月じゃなくてホッとしたようなガッカリしたような。
「あ、どうも…」
さっきまでの緊張が一気に解れた。
週末なので気合いが入ってるのか、ママは真っ赤なドレスで出迎えてくれた。
つーか、よく考えたら昨夜も来てるんだよな、ここに。
「さぁ、どうぞ~」
ママが奥へどうぞと誘ってくれるのだが、俺は体より先に視線を店内へと向け、ぐるりと中を見渡した。
……魚月は、いないようだ。
「あの、ママ…」
「はい?」
「今日、魚月さんは?」
変に怪しまれないようになるべく笑顔でそう訪ねた。
時間は9時過ぎだし、店にいても可笑しくない時間だ。
もしかして、もう少し遅めに出勤するのだろうか?
すると―――――――
「実は魚月ちゃん、お店辞めちゃったんです」
―――――――ドクンッ!
店を、辞めた…?