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せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
店を辞めたってどういうことだよ…。
だって、昨日までは普通に出勤してたじゃねぇか。
なのに、何で急に…。

「ど、どういうこと、ですか…?」

事態を飲み込めない俺はママにもう一度尋ねた。

「何でもお家の事情らしくて。今朝早くに電話があって"急で申し訳ないけど辞めさせて欲しい"って」


店を、辞めた…?








その現実は、俺の心臓を砕くには充分過ぎた。








俺は、魚月の電話番号すら知らない。
魚月に会うには、この店に来るしか手はなかった。
なのに、その手段すらもうなくなった。





「あ、あの…、魚月が何かしたんでしょうか?」

心配そうに俺を慰めようとするママ。

「あ、あ、いえ…っ、その…、ほ、本当に急、ですね…」

何もない、そう言いたいが、これだけ動揺してればママが心配するのも無理はない。
現に今だって、立ってるのがやっとだ。

「とりあえず、中に――――――」




魚月にもう会えない。
声も聞けない、顔も見れない。




「あの…、すいません…」

そう思っただけで、何の言葉も出てこず黙ってその場から立ち去る事しか出来なかった。

「魚塚さんっ!顔色が悪いですよっ!タクシーでも呼びましょうかっ?」


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