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せめて、今夜だけ…
第7章 夜明けのコーヒーを
俺の体を心配してるくれるママの声が聞こえたが、その声すらもう届かない。
俺は、まるで脱け殻のようにふらつく足取りでSirèneから立ち去った。

ふらふらの足取りで帰路に付くが、頭の中はボーッとしていて何も考えられない。

辺りを見渡せば週末なだけあって街はまだまだ明るくて、仲良さげに恋人達が寄り添って歩いている。

いつもは何でもない光景なのに、今は見るのが辛い。



はは…、バカだな、俺は。
家庭のある女に手を出して、挙げ句に逃げられるなんて。
まぁ、相手の男にバレて慰謝料を請求されなかっただけラッキーだ。
ややこしくなる前に切れて良かった。

はは…っ。

あ、そうだ…、家に着く前に買い物して帰らねぇとな。
晩飯は食いそびれたし、酒とつまみ的なものでも買って帰るか。



もう、何も考えたくない。
早く、いつもの日常に帰りたい。
ムリヤリでもいいから、心の中で強がりを言いながら、必死に自我を保とうした。
そうでもしないと、今にも足から崩れてしまいそうになる。


さっさと帰ろう…。
酒でも飲んで、何もかも忘れて眠りたい…。



「はぁ…っ」

ため息を付きながら家の近所のスーパーに到着。
この時間帯だし、人はそんなにいないはず。



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