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郁美の真実 parallel story
第16章 〜早紀〜
手伝いの最中、私は早紀と雑談をした。

とりあえす取っ掛かりは、外資系にお勤めのデキル女の自慢話を引き出して、ひたすら賞賛する内容だ。

まあ、聞けばここ数年は毎月数億を動かす取引を任されているらしく、実際にすごいので、自然とお世辞がスラスラと言えた。

夕方になり、晩餐の支度が整ったころ、早紀がヒソヒソと耳打ちしてきた。


「今日はありがと。あなたと話してると楽しいわ。」

「ね、パパたちを早めに酔いつぶして、外にでかけない?お礼に一杯ご馳走するわ。」


「お、いいですね!義彦さんや叔父さんの話は難しくって、毎回テスト受けてる気分になるんですよ。楽しんで飲めない。笑」


「郁美にはナイショよ。」


「えっ?」

白々しく驚いてみせた。

上々の滑り出しだ。

午後6時に晩餐が始まると、早紀と私とで叔父たちに積極的に酒を注いだ。

さすが血筋とでも言おうか、酒が好きなくせにてんで弱い。

午後8時には義彦も叔父も酔いつぶれてしまった。

早紀が叔父たちを促すと、ふたりとも寝室に消えて行った。

早紀は、叔父の背中を押しながら振り返って私を見ると、いたずらっぽくウィンクしてみせるのだった。

私はとりあえず苦笑いの表情を作っておいた。


「さて、どこ行きましょうか?駅前のバーなんてどうです?」


「う〜ん....駅前って嫌いなの。私が知ってるお店に行きましょ。」


「あ、じゃあそれで。」

叔父方から少し歩いてタクシーを止めると15分ほど移動し、早紀の馴染みの店に着いた。

店内はいい感じに暗い店で、カウンターにはカップルにぴったりのペアシートが並んでいた。


「へー、いい感じのお店ですね。なんかカップルみたいだ。」


「ふふふっ、いいでしょ?」

さて、早紀がどういうつもりか知らないが、思ったより早く事が運びそうだ。

普段なら早紀の火遊びに付き合うつもりはないが、最低でも個人的に信頼される関係にはもって行きたい。

私は日中とは戦略を変え、早紀のプライベートを掘り返すことにした。
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