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郁美の真実 parallel story
第16章 〜早紀〜
例年通り、早紀が私を見つけると、意味ありげに目配せをしながら微かに笑った表情を見せた。

毎年、この、どこか上から目線のようで、思わせぶりな仕草にイラっとくる。

そんな心情を隠すためにも、毎回、興味なさそうに軽く会釈をするのだが、今年は感情を抑えながら、にっこりと笑顔で返した。

早紀は、私の表情に一瞬「ん?」という反応をしたようだった。

少しずつ普段と違いを作って早紀に接近を試みる。

叔父の家は古くさい考え方の家柄で、新年を迎える支度は全て女性陣の仕事だ。

男どもは忙しく動き回る女たちをよそに、ただまったりと年末の雰囲気を楽しむ。

今年は郁美がいないだけに女性たちはさらに忙しそうだ。

これを利用しない手はない。

早速早紀に接近するチャンス到来だった。

「早紀さん、今年は郁美がいなくてごめんなさい。あまり役に立たないかもしれないけど、何か手伝わせてください。」


「えっ?!いいのよ。パパに怒られちゃうわ。」


「だいじょうぶ。叔父さんにはうまく言いましたよ。」


「じゃあ、お芋の皮むいてもらおうかしら。」


「おっ、皮むきは得意ですよ。任せてください。」


「ありがとう、悪いわね。」

こうして夕方まで義理叔母と早紀の手伝いをした。
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