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郁美の真実 parallel story
第17章 〜早紀の涙〜
「あ....あれ?早紀さん?」
早紀の涙に少しびっくりして、思わず声をかけた。
すると、早紀は涙を拭きもせず、にこっと笑いながら言った。
「そうなの。わたしも凡人なの。だから昔からずっとムリしてた....ホントはつらいときもあるの。」
いつもすました感じで、自信ありげなきつい表情をしている早紀がにっこりと笑う。
....正直かわいいと感じてしまった。
思わず反射的に早紀の頭を撫でて抱きしめてしまった。
「あっ....こんなこと....」
「....初めてかも....」
私はふと我に返った。
「あ!すみません!」
私が早紀から離れようと力を緩めた瞬間、早紀は強く抱きついて私の胸に顔を埋めた。
「なでなですき。」
「なでなでして。」
早紀はしばらく私の胸の中で涙を流していた。
私はしばらく早紀の頭を優しく撫でているしかなかった。
15分ほどすると、早紀が顔をあげた。
気取ったところはなく、スッキリしたような子どものような笑顔だった。
なんとか私は自分を取り戻しながら言った。
「じゃあ、早紀さん。帰りましょうか。」
「え?帰っちゃうの?」
「うん、明日また早起きでしょ?」
「....」
「また元気になりたいときはナデナデしますよ。」
「うん....ありがと。」
このあと私と早紀はタクシーに乗り、叔父方に帰った。
....早紀と一気に親密になるチャンスだったが。
悪巧みな思考が働かなくなってしまった。
最後は真心で早紀に接してしまっていた。
利用する相手に心を開いてしまってどうする。
酒を飲み過ぎてしまったようだ。
まあ、とにかく早紀からはいくらかの信頼は得られただろう....