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郁美の真実 parallel story
第21章 〜男の正体〜
仕事を終えた郁美は、ひとり駅前にあるシアトル式のコーヒーショップでラテを飲んでいた。

郁美は仕事帰り、たまにこの店でラテを飲むのが好きだった。

ところが、この日はお気に入りの席に座ってもため息しか出てこない。

郁美は「あの日」のことを思い出していた。

あの日、郁美は久しぶりに不倫相手のUと小洒落たバーでお酒を楽しんでいた。

もちろん夫には内緒の密会。
夫のことも尊敬して愛してはいるが、郁美はUのことが大好きだった。

この日は夫も仕事で不在。

安心して大好きなパートナーとの時間が過ごせるはずだった。

あのメッセージが届くまでは。

郁美がUとの会話を楽しみながらお酒を飲んでいると、携帯電話が振動した。

なんとなく確認すると、SNSのメッセージアプリにメッセージが届いていた。

夫からのメッセージかもしれない。

とりあえず、メッセージを確認しようとすると、続けてメッセージが届く。

「もう。すこし待ってよ。」と思いながらメッセージを確認した。

文面は
[郁美、今どこにいる?]
[すぐに返事しなさい]
だった。

一瞬夫からのメッセージかとは思ったが、送信元を確認すると一気に体から血の気が引くのを感じた。

送信元は「○×株式会社」

これは郁美がある人物の登録名を会社風に変えたものだった。

「○×株式会社」は郁美が大学生になった頃からメッセージが入るようになった送信元だ。

しかし、この送信元からは年に数回しかメッセージが来ることはなかった。

そして、今回は1年以上ぶりのメッセージだった。

(すぐに返信しないといけない!)
郁美はとりあえず
[少し待ってください]
というメッセージを返信した。

身体が反応する。

身体が覚えているのだ。

Uが郁美のソワソワした様子にすぐに気づいた。
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