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郁美の真実 parallel story
第32章 〜早紀、小学6年生 迫る黒い霧〜
「やあ、早紀ちゃん、初めまして、お父さんのお友達のFですよ」

早紀は父親の言いつけを思い出し、丁寧に挨拶をした。

「こんにちは、早紀です、今日はお招きありがとうございます」

「うんうん、早紀ちゃん、賢い子だね、今日はいっぱい遊んで行ってね」

「あ、喉が渇いただろう?なんでも用意しているから、まずは中にお入り」

F専務は、そう言うと早紀を屋敷の建物へ招き入れた。

F専務は温和な表情と、優しい語り口調で、早紀は少し安堵したのだった。

早紀はF専務との会話で、この屋敷が別荘であり、今は早紀とFの他には誰もいないということを聞いた。

これほどの建物に、F以外はいないということが不思議であったが、裕福な家というのは、こういうものなのだろうと思うことにした。

屋敷には高級そうな犬の親子が飼われており、前々から、犬を飼いたくて叶わなかった早紀の興味を引いた。

早紀は時間を忘れ、汗びっしょりになりながら、広い庭で犬と戯れた。

Fは、その無邪気で可憐な早紀の姿を見ながら、生唾を飲み込んでいた。

日が傾き、Fが早紀に声をかけた。

「早紀ちゃん、汗びっしょりになってしまったね、お風呂にしようか」

「あ、おじ様、わたしお着替えがないのでお風呂はいいんです」

「大丈夫だよ、君のパパがちゃんと持たせてくれている....それに、うちのお風呂は広いんだよ〜」

「入って行きなさい」

早紀は父親に言いつけを思い出した。

「....はい」

「うん、いい子だね」

早紀は屋敷の大きな脱衣場へ案内を受けると、衣服を脱いで浴場へ入った。

そこへ、体型の崩れた初老の男が裸で忍び寄るのだった。

シャワーを浴びて目をつぶっていた早紀は、突然後ろから何かに抱きつかれ、口を塞がれた。

「....!!!!!」

声は出せなかった。

すぐに耳元で男の声がささやきかける。

「早紀ちゃん....おじさんも一緒に入るよ....いいね」

「....」

早紀は、このとき、自分が何のためにここに送り込まれたのかを初めて理解した。

ただ、言いつけどおりにするしかなかった。

「....はい、おじさま」
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