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君の光になる。
第4章 会いたい
 ドライヤーの轟音が止むとブラシが夕子の胸元を走った。夕子の肩に手が掛かる。

「お疲れさま……」
 夕子の背後で安倍の声が聞こえた。

「あの、髪……いいですか。触っても……」

「ああ、どうぞ……」
 自分の髪が広末涼子になったか、否かは問題ではなかった。夕子は自分の髪を撫でてみた。毛先が手のひらに触ってこそばゆい。

「……ちょっと、男の子みたいじゃないですか?」

「ああ、かも知れませんね。だけど、僕は似合っていると思いますよ。とても可愛らしいですよ……」と、安倍の声が静かに答えた。

「……ならよかった……」
 夕子は笑いながら言った。

「……立花さん……」
 安倍の真面目な声が更に真面目に聞こえた。目の前の光が遮られたのが分かる。夕子も真面目に返した。

「はい……」
 トニックシャンプーの匂いが近づいた。

 ――あ……。

 温かく柔らかい唇が触れた。夕子は目を閉じた。

「んっ…………っっ」
 唇はすぐ離れ、再びそれが触れる。

 自分の手さえ、どうするべきなのか未経験の夕子には分からなかった。

 上唇を何度も啄まれる。その都度、チュと短い音を立てる。夕子の唇の先がプルンと震える。それを安倍の唇が啄む。

 安倍の手が夕子の背に回った。安倍の身体に引き寄せられる。
 夕子も安倍の背に手を回す。

 息苦しかった。先日より長いような気がした。

 どちらからともなく、スッと唇が離れた。トニックシャンプーの匂いが遠ざかる。唇が冷たい。音が聞こえるのではと思うほど胸が高鳴る。心が少し切なくなった。髪に安倍の指が通った。
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