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君の光になる。
第6章 君の光に
 夕子は安倍に促され、ベッドサイドに腰掛けた。

「あの……どんな感じですか。ホテルの中って……」

「えっと、シンプルですが、かなり広いワンルームという感じです。ベッドから見て十二時の方向の右手には革張りのソファーのある応接セットと大型の液晶テレビがあります。九時の方向にガラス張りのバスルームがあって……この部屋の天井は鏡張りになっています……」
 九時や三時とは方角を時計に見立てた表現だ。夕子は頭に部屋を思い描いた。

「鏡の天井とガラスのお風呂……ですか?」
 夕子が天井を仰いだ。手のひらが自分の頬を包む。

 安倍がベッド腰を降ろした。固いクッションのバネがフワリと揺れる。

 耳を澄ませる。音は安倍と夕子が呼吸する音、エアコンのモータの音、そして安倍の方から聞こえる手足を動かした時の衣擦れの音だ。

「安倍さん、少し寒いです……」

「大丈夫ですか。少し濡れてしまったので……」

 安倍の手が夕子の手を包む。安倍の肌の温もりが手のひらに広がった。その手のひらが包み込んだ夕子の手を柔らかく擦る。

「あ……」
 背をスッと引かれ、安倍の筋肉質の胸に抱き留められた。苦しいくらいに鼓動が速くなる。夕子は安倍の胸に耳を寄せた。

 ゴゴゴーゴーと、安倍の力強い拍動が聞こえる。

「聞こえますよ。安倍さんの心臓の音……」
 安倍の腕が強く夕子を引き寄せる。
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