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舞い降りた天使
第8章 失望
自分のことは
我慢できた
優しくされなくても
愛されなくても
話を聞いてくれなくても
でも
桜のことを
悲しませることは
許せなかった
私は
待たせていた桜の元に戻ると
すぐに桜を抱きしめ
髪を撫でながら
また嘘をついた
お仕事で
どうしても付けてなきゃダメで
そのミサンガは
あれじゃなきゃダメらしいと
桜は
じゃあしょうがないと
言っていたけど
笑顔はなかった
それから
パパと一緒に食べようとしてた晩御飯を
二人きりで食べ
二人きりでお風呂に入り
私は桜の髪を丁寧に乾かすと
もう寝る時間
「そろそろ寝ようか」
「…うん」
そんな時間になっても
パパは帰って来なくて
桜は相変わらず元気がない
私はそんな桜の隣に
添い寝をすると
桜のつやつやした
綺麗な髪を撫でた
「おやすみ、さっちゃん」
「うん…お母さん」
「ん?」
「パパ遅いね」
「そうね」
「お仕事なんでしょ?」
「うん」
「ねぇお母さん」
「何?」
「明日はお習字だよね?」
「そうよ。
どうしたの?
行きたくない?」
「ううん、行く。
もっと上手になりたいから」
「そう、偉いね」
「お母さん」
「ん?どうしたの?
眠れない?」
「ううん、あのね」
「うん」
「タクニイの写真見たい」
「いいよ」
私は
涙がこみ上げてくるのを
必死で我慢しながら
桜に巧くんの写真を見せてあげた
きっと
ミサンガをつけてくれた
巧くんが見たいんだと
私はすぐに分かっていた
だって
いつの間に置いたのか
桜の枕元には
巧くんの手紙が置かれていたから