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舞い降りた天使
第2章 パッションフラワー
「山田さん
2人目だそうですよー。
徳永さんも頑張らないと。
桜ちゃんがしっかりしないのは
一人だからなのよー。
やっぱり一人じゃねえ」


何人も育てている先輩に
そう言われて
言い返す言葉は何もない


『ひとりっ子はかわいそう』

大野先生だけじゃない
今までもう
何十回も言われた言葉だ


もちろん
桜がひとりっ子なのには理由がある
でもそれを説明したところで
きっと私のワガママだと
言われるだろう


だから私は
いつも用意してある言葉を
大野先生にも伝えた


「そうですね…
できるのなら欲しいんですけど」


…と。


欲しくてもできない
という言い回し

それを聞いた大野先生は
少し表情を硬くしたあと
言葉を濁した


『できるのなら』という言葉
それは嘘じゃない
けど…真実でもない


これ以上
その会話を続けないための
ただの言い訳


今日も私は…0点

そして
桜に兄弟をつくってあげられない罪悪感が
また私を襲った


「あ、お母さん!」

遠くから桜が私を呼ぶ声が聞こえた

顔を上げると
私を見つけて教室の窓から
大きく手を振る桜が見えた

私も大きく手を振って見せると
桜は嬉しそうに笑って両手を振る

そして
また私は思う

桜が笑顔なら
それでいい

桜が笑顔でいられるなら
私は泣いてもいいと。


するとその時
私の耳に
また大野先生の声が届いた


「ひとりっ子だから
お母さんと友達みたいに
なっちゃうのよね。
だからいつまでも人見知りで……」


……心が

折れそうだった


それでも
必死に笑顔をつくり
私は教室から出てきた桜と手を繋いだ


「スーパー行こうね、桜」


「うん!
お母さんのグラタン食べた~い」


「グラタンね、いいよ。
パパも好きだもんね」


「やったぁ!!」



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