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舞い降りた天使
第2章 パッションフラワー
そして
栗原くんは
昨日と同じように
午前中は出勤しないまま
お昼休みの時間になった
指定された天ぷら屋さんは
分かっている
見たことはあるけど
入ったことのないお店
私はひとり
バックを持って
その店に向かった
多分…ここのことだよね…
昼どきだというのに
誰も店前に並んでいないそのお店は
少し高級そうな雰囲気で
ちょっと緊張する
そう思いながら
その店のドアを開けると
すぐに栗原くんの
私を呼ぶ声が聞こえてきた
「あ、徳永さん、こっちこっち」
よかった
栗原くんもう来てたんだ
お店の奥から
手招きしている栗原くんの笑顔を見ると
私もほっとして笑みがこぼれた
「こっち、座って」
栗原くんが指差したのは
4人がやっと座れるような個室
栗原くんは私の向かい側に座ると
いつものインディアンエクボを作って
私に微笑みかけた
あぁ
ほんとに癒される笑顔
可愛らしくて
ずっと見てたいくらい
なのに私は…
今日は洋服に
少し気を遣って来たものの
やっぱり私は
主婦で
年上で
お母さんで…
「あ、徳永さん、何にします?
俺は…これかな」
栗原くんの正面に
座っていることだけでも
恥ずかしい
「じゃ、じゃあ私も」
楽しみだったランチなのに
自信のない自分に気を取られ
私はなんだかメニューさえゆっくり見ることもできず
もちろん
栗原くんと目を合わせることもできず
塗ってきたマニキュアを
見つめた