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舞い降りた天使
第3章 友達
あ…もうこんな時間…
壁にかかってる
小さな時計は
この夢のような時間が
もうすぐ終わってしまうことを私に知らせた
「もう…時間無いな…」
栗原くんも時計を見たのか
私の思いを代弁するように呟いた
「…うん、戻らないと」
戻りたくないけど
「嫌だな」
えっ…
「徳永さん」
「なに?」
「仕事、今忙しくないですよね」
「…うん」
「午後から仕事休みませんか
俺と一緒に」
その誘いを断る気持ちが
私には見当たらない
寂しい主婦の相手をしてくれる栗原くんの時間は
そんなに長くないはず
だからもう
二度とこんな誘いはないかもしれない
だったら
思い切って…
いや
でも…そんなことしてもいいのかな…
私の中に迷いが生まれ
返事が遅れると
栗原くんは
私の顔を覗き込むようにして
また
私を誘った
それは
とても真剣な眼差しで
「なんでこんなに
徳永さんのこと誘ってんのか
ちゃんと話すから
だから
これから
俺の部屋に来てくれませんか」
部屋…
その言葉に
私の胸がドキンと音を立てた
私を誘う理由は
薄々気づいている
それを聞いてしまって
私が首を縦に振れば
もう
この関係は
終わってしまうかもしれない
でも
どうして行き先が部屋なのか
そこで何が起こるのか
知りたい
「徳永さん
俺
そんなに悪い男じゃないから。
だから
今日だけ
お願いします」
その時の私は
どうかしていた
ううん
そうなってしまうほど
日常に疲れていて
逃げ場を失っていたんだと思う
そんなの
言い訳かもしれないけど
「……うん、わかった」