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最後の恋に花束を
第5章 大学一年の春

遙に手渡されたドライヤーで髪を乾かしながら、パソコンに映し出される写真を見る。どれもこれも美しい風景写真で、息が詰まりそうになる。
心がキュッと傷む感覚がした。
『 髪の毛乾いてるけど。』
ドライヤーの風の音の中に、止んでいた遙の声が聞こえハッとする。振り向くとお風呂上がりのスウェット姿の彼が立っていた。
『 まだ見てたの 』
可笑しそうに笑いながら私に近付く彼。
いつもの笑顔。
いつもの彼を見ているだけなのに。
なぜか心臓が速く脈打つのが分かった。
「 あっ… 見惚れちゃって 」
思わず視線を逸らしドライヤーのスイッチを切る。私の髪は完全に乾いていてふわふわと揺れている。
『 可奈って、ホント。俺の写真好きだよな 』
濡れたままの髪を触りながら、彼はベッドに腰掛けた。
髪を触る綺麗な指先がチラリと視界に入る。
別に彼を男として意識したことなんて…なかった。なかったはずなのに。ドキドキと高鳴る心臓に耐えきれず、彼から視線を逸らしてしまう。
『 ははっ、図星かよ〜 』
「 うっ… うるさいなぁ…もうっ… 」
私は遙に背を向けて、パソコンの画面と向き合う。
カチッと再びクリックすると、今までとは違った写真が映し出された。

