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最後の恋に花束を
第5章 大学一年の春

「 えっ… これっ… 」
その写真に目を奪われた。高鳴った心臓が、さらにドクドクと音を立てて脈打つ。今まで彼の撮る写真は風景写真で、人物が入ることはなかったのに、その写真には人物が映し出されている。
『 あー… これ、文化祭の時の。』
その声にハッとして顔を横に向けると、すぐそばに遙が居た。遙は私と同じ目線になるように前屈みになり、その写真に視線を向けている。
「 もしかして… これ… 」
『 おー。高校生の頃の可奈。』
そう。その写真は、私が文化祭で書道パフォーマンスを披露している時の写真だった。飛び散った墨が頬についているのにも関わらず、真剣な面持ちで大きな筆を持っている。
「 と、と、とと撮ってたの?!」
『 おー。もちろん。』
淡々と答える彼。動揺しているのは私だけの様だ。
『 それよりそろそろ寝よーぜ 』
小さな欠伸を漏らしながらそう口にする彼。写真に夢中になっていた私は慌てて時計を見ると午前2時を回っていた。
「 あっ…ごめん、そうだよね 」
『 それ、そのまま閉じてくれればいいから 』
そう言って彼は私から離れる。言われた通りパソコンを閉じると、私は椅子から立ち上がった。
自分が映る写真をパソコンへ残したまま…ー

