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最後の恋に花束を
第5章 大学一年の春

『 … じゃあ、遠慮なく 』

彼はそう呟くと、身体を起こし私の方へと身体を寄せる。思わず私は彼の腕を離し、ベッドに一人分のスペースを空ける。すると彼はスルリと布団に入り私の隣で横になった。


『 … これで満足?』


まだ上半身を起こしたままの私を見上げながら、彼は意地悪な笑顔を見せる。


「 ん … よろしい … 」


一緒に寝たい訳ではなかった。きっと。
けれど風邪をひかれても困るという思いで、私はベッドに横になった。

遙の体温が、少しだけ感じられる。

同じ布団に入っているんだから、それもそうか。なんて考えながら瞼を閉じる。私の心臓は、まだ高鳴っていた。


少しの間、沈黙が続く。
私は息をするのにも、緊張をしていた。

そんな時に、布団の中で遙の手が私の手に触れた。


「 … ひっ 」


ただそれだけなのに、驚いて変な声を出してしまう。


『 っ… ぷ … くくっ… 』


その反応に笑いを堪えるような遙の声が耳元で聞こえる。その反応に恥ずかしさを感じ、遙の方を向く。


「 ちょっと… 驚かさないでよっ… 」

『 ふっ… 一緒に寝たいっつったの誰だよっ… 』


ははっと笑いながら、遙は触れ合ったその手をギュッ握った。遙の体温がしっかりと私に伝わる。


「 一緒に寝たいわけじゃっ… 」

『 はいはい。良い子はおやすみ。』


そう言うと、遙は私に身体を寄せる。握られていた手を離したかと思えば私を包み込むように腕を回し、私の髪を撫でた。

ふんわりと… 遙の甘い香りに包まれる。

高鳴っていた心臓はいつしか落ち着きを取り戻し、優しい彼の腕の中で眠りに落ちた。

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