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最後の恋に花束を
第5章 大学一年の春

翌朝。
ふんわりと自然に目が覚めた。薄く瞼を開けると見慣れない白い天井が広がっている。その見慣れない天井に、昨日の夜のことを思い出す。視線を横に向けると、遙の綺麗な顔が視界に入る。まだスヤスヤと眠っているようだった。
「 … ん 」
起き上がろうとすると、私に巻きついた " 何か " で身体を起こす事が出来ない。
『 … んん 』
その動きを感じ取ったのか、遙が小さく声を零し私に巻き付いた " 何か " がギュッと私を拘束する。
そう… 彼が私を拘束していた。彼の腕が。私に抱き付くような形で、彼はスヤスヤと寝ている。
「 ちょっ… 」
思わず声を上げそうになった。けれど、彼のスヤスヤと眠る横顔はまるで安心しきった子供のようで… 私は口を噤んだ。
彼と一夜を過ごしたけれど、何もなかった。何かあることを期待していたわけではないけれど、少しばかり期待していたのかもしれない。けれど、何かあって私と彼の関係が崩れるのが一番嫌だ。
もしかしたら、本当に遙は私を女として見ていないのかもしれない。それはそれで悲しい。けれど、この信頼関係が崩れるような事がないのなら、私を女として見なくていい…なんて思ってしまう。
それくらい、私の中で彼の存在は大きくなっていた。

