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最後の恋に花束を
第6章 大学一年の冬

『 は…? 』

遙のその言葉の後、数秒間の沈黙が訪れる。まるでとても長い沈黙のようで、耐えきれず言葉を出した。


「 … ごめん、本当は言いたくなかった 」

『 … マジで言ってる? 』

「 … 冗談でこんな事言えない… 」



高鳴った心臓が。
ぎゅっと締め付けられていく。
言いたくなかった感情が。
どんどん溢れていく。



「 … ごめんなさい 」

『 … なんで謝んの。』

「 … だって もう友達じゃないでしょ 」

『 … なんでそうなんの。』



男と女の関係。そう、互いに意識していた。
それを確信してしまった今、もう友達ではいられないと思ってしまった。複雑な思いと、自分自身が発した言葉に息が詰まりそうになる。冬の寒さが、まるで身体中に突き刺さるように感じられた。


『 … あー そっかー 』

『 そうだったのかー… 』

『 なんだよ、俺ら両思いだったってこと? 』


いつもの調子で言葉を続けたのは遙だった。
彼の言葉に私は小さく " うん " と返した。


『 なんだよーーっ… そっかぁ… 』

『 じゃあ、これ、俺らの秘密な?』

「 … っえ? 」

『 秘密にしてれば、問題ないっしょ?』



彼は電話越しに何食わぬ顔をしているのか、さらりとそんな言葉を口にした。


「 … どういうこと? 」


珍しく、彼の言う言葉が理解出来ない。私も彼も男と女として互いを見て、恋愛感情を抱いていたというのに…ー

彼は冗談を続けているのか。でもそんな冗談口に出すような人では無い。彼の考えていることが…わからない。


『 … さっき話した事は、俺と可奈だけの秘密 』

『 これからも、俺と可奈は、トモダチ 』


" 友達 " と言う言葉に、胸がチクッと痛んだ。
きっと彼は、今の私を好きなわけでは無い。
過去の彼が、過去の私を好きなだけであって、今の彼が今の私を好きなわけではないんだと… 痛感した瞬間だった。

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