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最後の恋に花束を
第6章 大学一年の冬

旅行の日はすぐに訪れた。
土曜日のまだ混雑する前の駅の改札で、私は彼を待つ。1月半ばで雪がチラつく季節だったが、今日は運が良く晴天だ。天気予報を確認すると明日は雪予報になっていた。
マフラーに手袋。寒さ対策は万全にしてきていたし、忘れ物は無い。大きなリュックを背負い直した時、彼が現れた。
『 おっ、お待たせ!』
「 おはよ、乗車券買っておいたよ 」
そう言いながら、新幹線の乗車券を見せる。
私も彼も " いつも通り " だった。
改札をくぐった私達は、時間通りに新幹線に乗り込み隣の席のへと座った。
『 いやー、可奈が来てくれてよかったよ!』
「 んー?どうして? 」
『 俺の周りで写真好きなの、可奈ぐらいだからな 』
ははっ、と笑いながら彼は話す。この前の事なんて無かったような表情で。私は少しばかり緊張していた。
「 それよりさ 」
『 んー? 』
「 宿取ったの?」
『 んー? いや?』
トボけたように口先を尖らせ首を傾げる彼。彼の大きな瞳は、新幹線の天井を見上げている。これは彼のお得意の表情だ。何かあるとすぐこの顔をする。
「 私、今からネットで取ろうか?」
『 いやいや、いーから。』
「 じゃあどうするの?」
私は元々計画的に旅行は楽しみたい派だったので、宿を取らず遊びに行くなんて考えられなかった。計画性の無い彼に少しだけ苛立ちを感じる。
『 まー、俺に任せとけって 』
鼻高々にそう言う彼に、私は小さく溜息を吐いた。彼の言うことが信じられない訳ではなかったし、彼の事を信用していないわけでもなかったが、どんな時でもフワフワと雲の上を歩いているような能天気な彼は苦手だった。

