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最後の恋に花束を
第6章 大学一年の冬

数時間後 ー…
目的地に到着し写真展を見終わる頃には、もう日が暮れるところだった。時計の針は午後4時を過ぎたところだ。
「 ねぇ、お腹空いた 」
『 それなー。新幹線でおにぎり食べたきりだもんな。』
現地観光を兼ねつつ写真展会場へ向かったので、昼ご飯を食べ損ねていた。会場を出た私たちは来た道を引き返す。遙は土地に詳しいようで、私は彼の後をついてまわっていた。
遙が歩みを進めるまま電車に乗り、新幹線の通る駅まで戻ると改札を出た。新幹線が通るだけあって街はとても賑わっていたが、私たちはどこにでもあるチェーン店で食事を済ませた。
『 はー!食ったー!』
満足そうな表情で店を出る彼の後を追うように、私も店を出る。私はお腹が空いていたはずなのに、食事が進まずサラダとスープだけで済ませてしまった。
『 夜中 " ハラヘッタ〜 " とか言うなよー?』
私の真似をするかのような高い声を出す遙。顔真似もしているのか変な顔をしている。そんな彼を見た私は思わず、ぷっと笑い吹き出してしまう。
「 言わないし、私そんな声してないでしょ?」
ははっ、と二人で笑い合う。
それは " いつもの " 私達だった。
きっと食事が進まなかったのも、写真を見て満足したのかもしれないな、なんて自分に言い聞かせる。今日一日、何があるわけでもなく今まで通り遙と喋って写真を見た。
そう… いつも通り。
気が付けば時計の針は午後7時を回っていて、雪がチラチラと舞い始めていた。

