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最後の恋に花束を
第6章 大学一年の冬

部屋の洗面台スペースと寝室との間にドアなどの仕切りは無く、奥まった位置にある為ベッドから直接見える事は無かった。見える事はないけれど、扉がないというだけで緊張が走る。
「 のっ、覗かないでね?」
『 なに、それはフリ?』
「 ちっ… ちがう! 」
お互いに顔が見えない所から声を掛ける。彼は少し笑っていた。
緊張する心を押し殺しながら服を脱ぎ、全裸になった私は足早に浴室のドアを開けて中へ入った。この部屋に入ってすぐにお湯貼りボタンを押したので、湯船には充分なお湯が溜まっている。
化粧も落として髪を洗い、全てを綺麗に洗い流したところで湯船に浸かる。
静かな時が訪れると、寝室の方からテレビの音が聞こえてきた。私がいつもこの時間に見ている番組と同じ番組のようで、聞き慣れた声や音が漏れていた。
ゆっくりと入浴を終えると、濡れた体を拭いて浴室から出る。持ってきていたパジャマに手早く着替えると、濡れた髪を拭きながら彼の元へと戻った。
「 お風呂出ましたよ〜… 」
ベッドの方を見ると、彼はスマホ片手に瞼を閉じて寝ているようだった。うつ伏せで、けれど顔は横を向いている。起こしてしまうと悪いと思い、洗面台の前へと静かに戻ると部屋に置いてあったドライヤーで髪を乾かした。

