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君に熱視線゚
第53章 恋の修羅場ラバンバ!
所詮は肝試しゲーム。
人が作ったお遊びだ。暗くて薄気味悪いだけで他に害は何もない。
「俺が居るからこんなのなんでもないって!」
目の前に垂れ下がるボロボロの布切れを避けながら、夏目は苗の肩をもっと自分の方へと引寄せた。
脇腹には苗のささやかなAカップの胸が当たってくる。
夏目はその感触についムフッと鼻から息が漏れていた。
嫌らしくニヤけてしまう口許を夏目は手で隠す。
肝試し最高っ!
今、この場でそう叫んでやりたい。
夏目はそんな邪な想いが溢れた表情をキリッと引き締める。
先へ進むことを拒む苗を宥め、夏目はウキウキ気分を悟られないように廊下の突き当たりを目指した。
「ひっ……」
奥まできて、壁に貼られた矢印を確認した苗は更に怯えた声を短くあげた。
矢印を目で追うと、その先には土間が見える。土間の引き戸の向こうは幕で覆われていた。
「あ、こっちに行けばいいみたい。苗、行くぞ!」
夏目の言葉に苗の顔が在らん限りに恐怖に歪んだ。
暗がりでその表情は夏目にはよくわからない。強張る苗の肩を夏目はガシッと抱く。
そんな苗の体がスルッと夏目の腕から抜けていった。
素早く人の気配が横切る。風を切ったその感触に夏目は慌てて周りを見渡した。
「な、……っ…苗っ!?」
懐中電灯で周囲を照らして苗を捜す。
「え……うそっ…まじ!?…苗が──消えたっ…」
夏目は目を見開いて呟くと、唾をゴクリと飲み込んでいた……。