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君に熱視線゚
第53章 恋の修羅場ラバンバ!
「どしてここに!?ゲームは?」
「同じグループの人は早くに皆リタイアした……ここは庭みたいなもんだから俺一人でも余裕だし……」
悟はそう言いながら手に入れた食材を苗にほら、と見せていた。
「苗のグループのやつもほら……」
「ああっ…こ、これはっ…」
目の前に人参をぶらさげられ、苗は大きなクリ眼に涙を溜める。
まるで秘宝でも見つけたように、苗は潤んだ瞳を輝かせていた。
悟はそんな苗をくすりと笑う。
「苗はあの土間の奥、昔から苦手だったろ?……だから捕っておいてやった」
「ううぁ…っ…ざとるぢゃんっ…あ、ありがどうぅっ…」
感謝で涙が溢れ、言葉にならない。苗は悟の言葉にうんうん頷きながら一生懸命に礼を言った。
ここは単純な造りの二階建て木造校舎だ。横に広いだけで悟にとっては小さな頃から遊びなれた秘密基地のようなものだった。
壁を伝えば目隠ししても出口がわかるくらいだ。
そして、夏休みに帰省した苗と遊んだ場所でもある。
悟の祖父が卒業してまもなく閉校したこの小学校には色んな噂が絶えず出回っていた。
その噂の一つ。
“開かずの土間”
学校の近くに建てられた地蔵の小さな社の傍らに、いつも腰掛けて一休みしていた村一番の物知り。
ヨネ婆さんから聞かされた噂話はずっと苗の記憶に残っていた……。