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君に熱視線゚
第53章 恋の修羅場ラバンバ!
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「あーっ…さとるちゃん! 見てこれ! ミカンにカビが生えて草餅になってるだよ!」
「なえ…っ…あんまり走ったらまた熱が出るぞ…」
蝉が一斉に合唱する八月。
暑さはまだまだこれからだ。
幼少の頃に預けられていた田舎に帰省した小学四年生の苗は、夏休みに小学校の裏山に続く小路で、小さなお地蔵さんに供えてあった腐った夏ミカンを見つけて喜んでいた。
「中、どうなってるだかね?」
とても気になる……
苗はしゃがみ込むと棒きれで恐る恐るミカンを刺した。
「うわぁ…ぐにゅってなった…」
「やめろよ苗…バチ当たるぞ」
棒に圧されて皮がへこみ汁がぐちゅっと滲み出る。
気持ち悪がりながらも苗は悟の言うことを聞かず、その手を止める気配がない。
「これっ!」
「……っ…」
急に聞こえた大きな声に、苗と悟はビクッとなった。
「それは喉が渇いて渇いて苦しい思いをしながら死んじまった兵隊さんのためのお供え物だねっ…遊んじゃだみだ」
振り返った苗と悟は腰の曲がったお婆さんにそう叱られた。