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君に熱視線゚
第53章 恋の修羅場ラバンバ!

美味しい思い出。

楽しい思い出。

それが増えるのはいいことだ。

苗は夕食を悟のお屋敷で御馳走になりながら、東郷家の当主である大旦那。

悟の祖父の話に笑っていた表情を急に固めた。

「……そういや、じいちゃん達が廃校になった小学校に通ってた頃裏山の小道にある地蔵の隣に婆さんがいつも座ってたなぁ……」


まるで懐かしむように語るじいちゃんに、刺し身を摘んだ苗の手がピタリと止まる。

苗と悟はゆっくり顔を見合わせた。

「ヨネ婆って言ってな、地蔵に供えた夏ミカンを小学校の悪坊主達が食うから見張ってる。つってな?…はは、いやぁ!あの婆さんは足が速かったなぁ!…杖なんてぜんぜん必要なかったな!」

大笑いするじいちゃんと共に悟の父も一緒に声を立てた。
杯の酒を揺らしながら、じいちゃんはぽつりと口にする。

「100は越して長生きすると思ったが……100才を前にして死んじまったな」


「──…っ…」

「お? どうしたどうした?悟と苗ちゃん?揺れてるように見えるけが、今日はじいちゃん酔ったかな?…ははは!」

ガタガタと手が震え出す。そんな悟と苗を見て、じいちゃんは酔いの回った目を何度となく瞬いていた──。


その晩だった──、


腐った夏ミカンを杖に刺したヨネ婆さんに、苗は延々と追い掛けられる夢を見てうなされ続けたのだった…。


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