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君に熱視線゚
第52章 君に熱視線゚〜愛の鈍行列車〜
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穏やかな風薫る四月──
真新しいブレザーに袖を通した新入生をここ、結城学園は迎えていた。
「新入生代表の挨拶──」
促されて一人の男子生徒がスクッと立ち上がる。
一年生のわりにしっかりとした顔立ちだ。その生徒はマンモス校となるこの結城学園に首席で合格しさっそく代表を任されていた。
「では、一年A組。東郷 悟君お願いします」
壇上に上がり、悟はカンペも開かずに前を向く。
その堂々とした表情はとても田舎から出てきたとは思えない。
「あの子、なえちんの幼馴染みってほんと?」
「うん」
二列に並んだ後ろから、由美はこっそり苗に聞いていた。
「披露宴にも来てただよ、見かけなかった?」
「ごめん、夏目君に気を取られちゃってあまり回りは見れてない…」
由美は申し訳無さげに舌を出した。
あの日はあまりのショックに泣きわめく夏目の世話で、由美も克也も参列者の顔を意識するどころではなかったのだ。
「お殿様家系ってほんと?」
「うん、世が世なら悟ちゃんは若様なんだっておばちゃんが言ってた」
「へえ…」
コソコソとした話し声に見回りの教師の目が苗達を向く。二人はさっと顔を前に上げて悟の演説に耳を傾けていた。
穏やかな風薫る四月──
真新しいブレザーに袖を通した新入生をここ、結城学園は迎えていた。
「新入生代表の挨拶──」
促されて一人の男子生徒がスクッと立ち上がる。
一年生のわりにしっかりとした顔立ちだ。その生徒はマンモス校となるこの結城学園に首席で合格しさっそく代表を任されていた。
「では、一年A組。東郷 悟君お願いします」
壇上に上がり、悟はカンペも開かずに前を向く。
その堂々とした表情はとても田舎から出てきたとは思えない。
「あの子、なえちんの幼馴染みってほんと?」
「うん」
二列に並んだ後ろから、由美はこっそり苗に聞いていた。
「披露宴にも来てただよ、見かけなかった?」
「ごめん、夏目君に気を取られちゃってあまり回りは見れてない…」
由美は申し訳無さげに舌を出した。
あの日はあまりのショックに泣きわめく夏目の世話で、由美も克也も参列者の顔を意識するどころではなかったのだ。
「お殿様家系ってほんと?」
「うん、世が世なら悟ちゃんは若様なんだっておばちゃんが言ってた」
「へえ…」
コソコソとした話し声に見回りの教師の目が苗達を向く。二人はさっと顔を前に上げて悟の演説に耳を傾けていた。