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エメラルドの鎮魂歌
第6章 招かれざる訪問者
「初めまして、瑞葉様。有島篤人と申します。
これから、深津先生に代わり私が瑞葉様の主治医としてご健康をお守りしてまいります。
精一杯務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」
…森で会った若い男は、恰も初対面であるかのようにそう名乗り、瑞葉に穏やかに笑いかけたのだ。
瑞葉は心臓が止まるほどに驚き…しかし傍らに立つ八雲に気づかれないように必死で動揺を押し殺した。
「…初めまして…。こちらこそ、よろしくお願いします…」
男の手が静かに差し出された。
思わずたじろぐ瑞葉の眼を、男は瞬きもせずに見つめ…そっと細めた。
その一見穏やかに見える瞳には、底知れぬ熱情と情念の色が湛えられていた。
…それは、有無を言わせぬ無言の脅迫にも見えた。
瑞葉は恐る恐る白く華奢な手を差し伸べた。
男…有島はその手を押し懐くように握りしめ、一度だけ息が止まるほどに強く握りしめ…そっと離した。
「…八雲さん、早速ですが瑞葉様のご健康のチェックをしたいと思います。
深津先生からの申し送りも確認しなくてはなりません。
小一時間ほど席を外していただけますか?」
有島は極めて丁寧に爽やかに…しかし、はっきりと要望を伝えた。
驚きのあまり長い睫毛を震わせるエメラルドの瞳を繋ぎ止めるかのように、有島が瑞葉にだけ分かるように強い視線を送る。
八雲が瑞葉の意思を確認するかのように、見下ろす。
「…瑞葉様…」
瑞葉は小さく頷くと、八雲に下がるように目線を送った。
これから、深津先生に代わり私が瑞葉様の主治医としてご健康をお守りしてまいります。
精一杯務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします」
…森で会った若い男は、恰も初対面であるかのようにそう名乗り、瑞葉に穏やかに笑いかけたのだ。
瑞葉は心臓が止まるほどに驚き…しかし傍らに立つ八雲に気づかれないように必死で動揺を押し殺した。
「…初めまして…。こちらこそ、よろしくお願いします…」
男の手が静かに差し出された。
思わずたじろぐ瑞葉の眼を、男は瞬きもせずに見つめ…そっと細めた。
その一見穏やかに見える瞳には、底知れぬ熱情と情念の色が湛えられていた。
…それは、有無を言わせぬ無言の脅迫にも見えた。
瑞葉は恐る恐る白く華奢な手を差し伸べた。
男…有島はその手を押し懐くように握りしめ、一度だけ息が止まるほどに強く握りしめ…そっと離した。
「…八雲さん、早速ですが瑞葉様のご健康のチェックをしたいと思います。
深津先生からの申し送りも確認しなくてはなりません。
小一時間ほど席を外していただけますか?」
有島は極めて丁寧に爽やかに…しかし、はっきりと要望を伝えた。
驚きのあまり長い睫毛を震わせるエメラルドの瞳を繋ぎ止めるかのように、有島が瑞葉にだけ分かるように強い視線を送る。
八雲が瑞葉の意思を確認するかのように、見下ろす。
「…瑞葉様…」
瑞葉は小さく頷くと、八雲に下がるように目線を送った。