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エメラルドの鎮魂歌
第6章 招かれざる訪問者
そうして有島は、瑞葉の主治医となり週に二度、診察や検査に通うようになった。

警戒心の強い八雲は、瑞葉が肌を見せる診察の際には必ず同席をした。
瑞葉の寝間着や衣服の鈕を外したり、着衣させたりするのは全て八雲が行なった。

有島は八雲には決して瑞葉への執着を微塵も見せなかった。
狡猾に瑞葉への激しい恋情を隠し、ひたすらに穏やかで生真面目な医師の仮面を被り続けた。

一通りの診察が済むと、八雲は有島のお茶の支度をする為に部屋を退出する。
部屋から出る八雲の背中を心細げに見送る瑞葉を、有島は切なげに見つめる。

…八雲の靴音が消え去ると、男は堪え切れない恋情と執着を露わにし始めるのだ。
「…瑞葉様は…あの執事が殊の外、お気に入りのようですね」
はっと振り返ると、驚くほど近くで瑞葉を見つめる有島の視線とぶつかった。
貌を背けようとしたその手をひたりと重ねられ、瑞葉は震え上がる。
「…や…やめて…」
振り払おうとしたその手を更に握り込まれる。
「手を握ることも許してはいただけないのですか?
…私は毎日毎日貴方のことで、狂おしいほど胸を焦がしているというのに…。
貴方は冷たい方だ…」
「…そんな…!」
美しい眉根を寄せて抗議しようとする瑞葉に、有島は嬉しそうに笑いかける。
「…お怒りになる貴方も痺れるほどに美しい…。
無視されるより、憎まれるほうがいい…。
私が哀しいのは、貴方に無関心な眼差しを向けられることだ…。
…そして貴方の関心は…あの執事にしかないことも、私は存じております」

瑞葉はぎょっとしたように有島を振り返った。
「…な、何を…」
強張る瑞葉の白磁の陶器のように白く滑らかな頬を、愛おしげに撫でる。
「…さわ…らないで…」
「…触れるだけです。それ以上はいたしません」
恍惚とした表情をふと静止させ、その深い湖水のような美しいエメラルドの瞳を覗き込む。
「…それとも…。
貴方とあの執事との関係を、世間に暴露してもよろしいのですか?」
瑞葉は息を飲んだ。
「…君は…何を言っているの…⁈」

凍りついた瑞葉の貌を愛おしくて堪らないように、撫で摩りながら、あくまで優しく囁く。

「…愛する方のことは、すべて知り尽くしたいのです。
貴方の秘密は…何もかも…。
ご安心ください。私は誰にも話しません。
…貴方が…私の願いを聞いてくださるならば」







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