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エメラルドの鎮魂歌
第6章 招かれざる訪問者
…今夜も、次の間の扉は僅かに開いている…。

瑞葉は毒を膿んだ甘やかな快楽の海から、瞼を開く。

…暗闇の中…開かれた虚のような瞳…。

恐怖と嫌悪と…そして微かな背徳的な快楽と…
そんな自分が不潔でたまらない。
目を強く閉じ、男の首筋に縋る。
…瞼の裏側にはしかし、有島の黒々とした瞳が映し出され、瑞葉は必死で残像を追い払おうとする。

…いや…いや…
自分から腰を揺らめかせ、快楽に没頭する。
…そんな自分は、あの男にはどう映っているのだろう…。
八雲が瑞葉の手を引き上げ、繋がったまま膝に乗せる。
「…んんっ!…あ…ああ…おお…き…!…」
…怒張した牡が違う角度で淫肉を穿ち、瑞葉は悲鳴を上げた。
荒々しい律動が始まる。
「…瑞葉…愛しているよ…」
八雲の掠れた美声に下腹部は甘く痺れ、悦びに震える。
「…八雲…愛している…お前だけ…んんっ…!」
激しく揺すぶられ、瑞葉は息を弾ませる。

…靄がかかったような視界の中…扉の隙間から見えたものは…。

…有島は、己れの牡を握り締め…激しく扱き上げていたのだ…。

その暗く光る瞳は、瑞葉の痴態を見つめ続けている。
男の牡は、闇の中でも醜悪に赤黒くその存在を誇示していた。

…ああ…有島に…犯されているみたい…。
八雲と…有島…二人掛かりで身体を蹂躙されているような、暗く湿った邪悪な妄想に囚われる。
こんなことで、感じてはならないと唇を噛み締める。

澱んだ澱のような鈍色の快楽はしかし、瑞葉の身体を覆い尽くし、やがてそれは絶頂へと導いた。
「…ああ…っ…も…う…達く…達っちゃう…!」
「…私もだ…出すよ…瑞葉の中に…!…くっ…!」
…八雲は瑞葉の中に精を放つ時、敬語を使わない。
やや乱暴な物言いで、瑞葉を犯し切るのだ…。
「…ああっ…!…あつ…い…おなか…八雲の…たくさ…ん…でて…る…」
幼い口調で譫言のように快楽を伝える。
…そのように八雲に仕込まれた。
射精が終わっても、八雲は緩やかな律動をやめなかった。
最後の一雫まで…瑞葉の体内に染み込ませようとするかのように、ゆるゆると腰を遣う。
「私の子どもを…孕んでくれ…瑞葉…」
色香に溢れた男の声が、鼓膜を犯すかのように囁く。
か弱い身体に余る激しい快楽に、息も絶え絶えになる。

…ぼんやりと、薄眼を開ける…。
扉の向こう、暗く光る二つの眼は…もはや消えていた…。



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