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エメラルドの鎮魂歌
第6章 招かれざる訪問者
「ここは貴方の所有地です。
この池を訪れるものは貴方と私だけです。
池への垣根には鍵をかけましょう。
誰にも近づかせません。
…永遠に貴方と私だけの秘密だ…」
「…八雲…」
…これで自分は共犯者となったのだ…と、瑞葉はしんと静まり返る胸のうちで悟った。
八雲は黙々と穴を掘り続ける。
…美しく…冷たい…底知れぬ冷酷さを秘めた墓掘り人…。
その横顔は、瑞葉の見知らぬ人のように見えた…。
…僕は…八雲のすべてを知らない…。
…いや…。
瑞葉は、感情を微塵も滲ませないその美しい背中を見上げる。
…もしかしたら、僕は何も知らないのかも知れない…。
八雲が何者か…。
…何を考えているのか…。
背筋がぞくりと震えた。
ざくざくとしたリズムを刻んでいた音が止んだ。
「…充分な深さでしょう」
恐る恐るその穴を覗き見る。
…陽が落ち、薄墨色の空気に包まれ…暗い空洞はまるで地獄の入り口のようだった…。
その穴に、八雲が慎重に絨毯ごと有島の死体を入れる。
…さっきまで…生きていたのに…。
自分に狂気のような執着と執愛を向けてきた…。
…恐ろしくて…不気味で…鳥肌が立つほどに嫌悪感を抱いた…。
強引に犯されそうになり、泣き叫んだ。
心から絶望した。
…けれど…
「…他人の身体を有無を言わさず犯す人間に生きる権利はありません。
同等の罰を受けるべきです。
…ましてや彼は貴方を脅迫し、辱め、暴行しようとした。
…殺すだけでは飽き足らないほどです」
…瑞葉の心を読むかのような言葉であった。
「…八雲…でも…そのせいで…僕はお前を殺人者にしてしまった…!」
涙ながらに訴える瑞葉を振り返りもせずに、八雲はシャベルで土を掬う。
「私は何ひとつ後悔してはおりません。
…これが私の正義です」
「…八雲!」
…八雲が漸く振り返る。
まるで、初めて瑞葉を見つけた時のように、誇らしげに優しく微笑った。
…懐かしい…大好きな八雲だ。
「貴方を守れて、本当に良かった…。
…これからも、貴方を穢そうとする者は…私が殺します」
この池を訪れるものは貴方と私だけです。
池への垣根には鍵をかけましょう。
誰にも近づかせません。
…永遠に貴方と私だけの秘密だ…」
「…八雲…」
…これで自分は共犯者となったのだ…と、瑞葉はしんと静まり返る胸のうちで悟った。
八雲は黙々と穴を掘り続ける。
…美しく…冷たい…底知れぬ冷酷さを秘めた墓掘り人…。
その横顔は、瑞葉の見知らぬ人のように見えた…。
…僕は…八雲のすべてを知らない…。
…いや…。
瑞葉は、感情を微塵も滲ませないその美しい背中を見上げる。
…もしかしたら、僕は何も知らないのかも知れない…。
八雲が何者か…。
…何を考えているのか…。
背筋がぞくりと震えた。
ざくざくとしたリズムを刻んでいた音が止んだ。
「…充分な深さでしょう」
恐る恐るその穴を覗き見る。
…陽が落ち、薄墨色の空気に包まれ…暗い空洞はまるで地獄の入り口のようだった…。
その穴に、八雲が慎重に絨毯ごと有島の死体を入れる。
…さっきまで…生きていたのに…。
自分に狂気のような執着と執愛を向けてきた…。
…恐ろしくて…不気味で…鳥肌が立つほどに嫌悪感を抱いた…。
強引に犯されそうになり、泣き叫んだ。
心から絶望した。
…けれど…
「…他人の身体を有無を言わさず犯す人間に生きる権利はありません。
同等の罰を受けるべきです。
…ましてや彼は貴方を脅迫し、辱め、暴行しようとした。
…殺すだけでは飽き足らないほどです」
…瑞葉の心を読むかのような言葉であった。
「…八雲…でも…そのせいで…僕はお前を殺人者にしてしまった…!」
涙ながらに訴える瑞葉を振り返りもせずに、八雲はシャベルで土を掬う。
「私は何ひとつ後悔してはおりません。
…これが私の正義です」
「…八雲!」
…八雲が漸く振り返る。
まるで、初めて瑞葉を見つけた時のように、誇らしげに優しく微笑った。
…懐かしい…大好きな八雲だ。
「貴方を守れて、本当に良かった…。
…これからも、貴方を穢そうとする者は…私が殺します」