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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
…その夜、和葉は軽井沢の屋敷に泊まった。
そして瑞葉の寝台で、兄弟は並んで寝んだ。

「…和葉、今夜は一緒に寝て…」
晩餐のあと、瑞葉がそうねだったのだ。
八雲はもう何も言わなかった。

…二人で並んで、広い寝台に横たわる。
久我山の屋敷で暮らしていた時には、和葉がよく薫子の目を盗んでは瑞葉の部屋に忍んで来た。
そうして朝まで一緒の寝台で眠った。
和葉の語る外の世界の話を、瑞葉はまるでお伽話のように目を輝かせて聞き入ったのだ。

昔は、瑞葉が和葉を抱いて寝たけれど、今夜は違う。
和葉が瑞葉をその胸に抱いた。
…和葉の身体は、もう大人の成熟したそれであった。
細身ながら美しい筋肉に覆われたその身体を、瑞葉は愛おしげにそっと白く細い指先で撫でた。
「くすぐったいよ、兄様…」
和葉は小さく笑いながら、瑞葉の美しい蜂蜜色の髪にそっとキスを落とした。
「…和葉はもうすっかり大人なんだね…」
やや潤んだエメラルドの瞳が和葉を見上げる。
二人はさながら、恋人同士のように見つめ合った。
「…兄様は少しも変わらないね。相変わらず、女神様みたいに綺麗だ。
…この蜂蜜色の髪に、宝石みたいに綺麗な翠の瞳…。
僕は兄様の容姿に憧れたものだよ…」
瑞葉のその典雅な美貌に、ふっと翳りが帯びる。
「…そんな…僕のこの髪や瞳は、お祖母様に忌み嫌われて、遠ざけられたのに…。
僕は和葉のその髪や瞳が羨ましかったよ…」
その指先で、和葉のつややかな明るい栗色の髪を梳き上げ、引き締まった端正な小麦色の肌を辿る。
「…和葉みたいな髪や瞳の色だったら、僕はお祖母様に嫌われなかったのかな…お母様やお父様のおそばで、和葉とも過ごせたのかな…て」
瑞葉の寂しげな微笑を見て、和葉の華やかな貌が苦しげに曇る。
「…兄様…」
ふふ…と瑞葉は笑った。
そして、安心させるようにその秀麗な額に自分の額をつけた。
「大丈夫。今はそんなことは思わないよ。
僕には八雲がいるし…和葉は僕を好きでいてくれるし…」
和葉は瑞葉の身体を抱きしめ、そのほっそりとした肩口に貌を埋めた。
…伽羅の薫り…変わらぬ芳しい薫り…。
けれどそこに艶めかしくも生々しい男の薫りが加わっていることを、感じ取る。
和葉はそっと貌を近づけた。

「…兄様…愛しているよ…」
和葉の唇が、瑞葉の柔らかな薔薇色の唇にそっと触れ、その甘い吐息ごと奪うように優しく吸った…。
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